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役員報酬の決定について

2022年9月25日

法人の利益を圧縮するためには経費を多く支出する必要があります。

一般的に法人が多く支出する経費で挙げられる項目は、仕入高、役員報酬、従業員に対する給与、減価償却費、保険料、外注費などが挙げられます。

今回は法人が多く支出する経費のうち、役員報酬について解説していきます。

役員報酬と給与の違い

役員報酬とは、取締役や監査役などといった役員に対する報酬をいいます。

一方で、給与とは、従業員に対する給与をいいます。

役員報酬と給与の違いは、役員報酬は会社の経費にするために一定の要件があるのに対して、給与は基本的に支給した分が全額経費となります。

家族経営などをしている法人の場合には、配偶者や親を役員としていることが多く、これらの役員が実際の業務には一切関与していなくても、毎月役員報酬として支給して会社の税金を抑えるために利益を圧縮しているケースが見受けられます。

また、決算月近くになって、急に利益が出たからといって役員報酬を支給するといった利益調整を行なうことも考えられるため、役員報酬を損金算入させるためには一定の要件が設けられています。

役員報酬の損金算入要件

役員報酬を損金算入できる要件は次の3つに該当する場合、損金算入が認められます。

定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して毎月同額を支給する給与です。

また、これに準ずるものとして、適正に給与改定が行われたものが含まれます。

給与改定については、法人の利益調整に利用されやすいため、恣意性の排除をする観点から、以下に掲げる3つの給与改定に限定されています。

  • その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる改定
  • その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされた役員に係る定期給与の額の改定(臨時改定事由)
  • その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定(業績悪化改定事由)

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与です。

事前確定届出給与は届出期限までに適正に届出を行わない限り、損金の額に算入することができないため、以下に掲げる届出期限を正確に把握する必要があります。

また適正に届出を行った場合でも、届出額と実際の支給額が異なる場合は、その全額が損金不算入となるため注意が必要です。

届出の原則

事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次のイまたはロのうちいずれか早い日が届出期限となります。

イ 株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議により、その定めをした場合におけるその決議をした日から1ヵ月を経過する日

ロ その会計期間開始の日から4ヶ月を経過する日

臨時改定事由により定めをした場合

臨時改定事由により、その臨時改定事由に係る役員の職務について、事前確定届出給与に関する定めをした場合は、次に掲げる日のうち、いずれか遅い日が届出期限となります。

イ 上記原則によるイ又はロのうちいずれか早い日

ロ 臨時改定事由が生じた日から1ヵ月を経過する日

業績連動給与

法人税法上、役員給与として損金算入できるものに業績連動給与も含まれています。

ただし、原則的に少数の個人株主によって支配されている同族会社が支給する業績連動給与は全額損金不算入となります。

役員報酬の決定方法

役員報酬を決定する方法としては以下の通りとなります。

役員報酬の決定に関して、まず法人税法上は株主総会や取締役会等による決定を前提としていると考えられます。

一方、会社法では取締役等の報酬等の取り扱いについては、会社法361条1項より、取締役の報酬や賞与等については、定款に定められていないときは、株主総会の決議によって定める。と規定されております。

以上の内容から、税務におけるプロセスを考えると、まず会社法の規定に基づき株主総会等で役員等の報酬の額を決定します。

その後、その株主総会等の決議を行った日、決定した報酬の額をもとに、法人税法上の取り扱いを判断し、各役員の報酬額を決定することとなります。

このように役員報酬は株主総会等によって決められるため、役員報酬を損金に計上するための根拠資料として、株主総会の議事録が必要となります。

この議事録については税務調査が入った際にも必ず確認される論点となるので、役員報酬を決定する場合には、議事録を作成することも忘れずに行う必要があります。

結論

役員報酬は、法人の経費の中でも特に大きな割合を示す項目であるため、支給したにもかかわらず経費として損金算入が認められない場合には、多額の法人税を納付する事になってしまいます。

役員報酬とは従業員の給与とは異なり、上述したように経費として認められるには一定の要件があります。

少しでも法人税の納税を抑えたい場合には、役員報酬の全額を損金算入が認められるように、役員報酬を支給する場合には税務上の注意点について調べておく必要があります。

今回の記事から、役員報酬について参考になれば幸いです。

投稿者
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新川 尚

exillia accounting officeの税理士・公認会計士です。
税務、コンサルティングに関するコラムや、
おすすめのモノ・サービスなどの紹介コラムを更新していきます。

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