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累進課税制度とは?住民税の申告が必要なパターンと合わせて解説

2022年8月31日

日本の税率は、税金の種類や規模によってさまざまな課税方式や税率により課税されております。

このように一律の税率によって課税しない理由は、課税の公平を確保するためにさまざまな方法により課税されていると考えられます。

ただし、税金の種類によっては住民税や消費税などのように一律な税率も存在します。

これは国民が国や都道府県、市町村などからさまざまな行政サービスを利用するためにかかる費用を税金として負担するものであることから、一律な税率としております。

今回は累進課税制度について解説していきたいと思います。

また、住民税の申告が必要なパターンについても解説していきます。

累進課税制度とは

累進課税制度とは、課税対象額が増加すれば増加するほど税率が高くなっていく課税制度になります。

累進課税制度には、単純累進課税と超過累進課税の2種類がありますが、日本では後者の超過累進課税が採用されています。

まず単純累進課税とは、所得が増えれば増えるほど所得税率も高くなり、所得が1,000万円の場合には、単純に所得1,000万円の全額に対して当該所得に該当する税率を乗じて所得税額を計算するものです。

超過累進課税とは、単純累進課税と同様に所得が増えれば増えるほど所得税率も高くなりますが、単純累進課税と異なる点は、一定金額を超えた分についてはその超えた金額に対してさらに高い税率を乗じて計算する課税方式になります。

現在の所得税による超過累進課税の税率は、課税所得1,949,000円まで税率5%、195万円から3,299,000円までが税率10%、330万円から6,949,000円までが税率20%695万円から8,999,000円までが税率23%、900万円から17,999,000円までが税率33%、1,800万年から39,999,000円までが税率40%、4,000万円以上が税率45%となっております。

累進課税制度のメリットとデメリットについて

メリット

累進課税により課税の公平が確保されます。

これは高所得者の場合には高い税率により納税額が大きくなり、低所得者の場合には低い税率により納税額は少なくなります。

このように累進課税制度は所得が高い人は高い税率になり、税金を多く納めることが出来る能力の高い人から税金を多く徴収し、多く納めることが出来ない人からは少ない税金を徴収することになるため、富裕層とそうでない層の人たちとの間の所得格差が拡大するのを防ぐ事ができ、公平な課税を実現することができます。

デメリット

  • 制度が複雑なため自分で税額計算できない。

税率が一律であれば、自分が納める税額も単純に所得に税率を乗じれば済むため計算が非常に容易となります。

しかし、累進課税制度は増加した分だけ税率が高くなるため、自分で税額計算するには非常に複雑な課税方式であることが考えられます。

  • 物価を反映しない。

累進課税のデメリットとして、物価を反映しないことが挙げられます。

所得が増えた場合であっても、所得以上に物価が上がってしまうと実質的に所得が減った事と同じであると考えられます。

累進課税制度の場合、物価が上昇しても税率は下がらないため、納税額も実質的に増えてしまうことになります。

累進課税制度が適用されている税金の種類

現在、日本の税金で累進課税制度が利用されているものは、所得税、相続税、贈与税となります。

所得税とは、事業活動により稼いだ利益に対して課税された税金を言います。

相続税とは、亡くなった人の財産を、相続により取得したに財産に対して課税される税金です。

財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を下回る場合には、相続税は発生しませんが、基礎控除額を超えた場合に相続税が課税されます。

贈与税とは、1月1日から12月31日までの1年間の間に贈与に取得した財産に対して課税される税金です。

なお、贈与税の基礎控除額として年間110万円以下の場合には贈与税は課税されません。

贈与税は、生前に財産を他人へ無償で譲渡することで相続税を回避するといった事態を防ぐために、贈与税が存在しており、相続税を補完するものと考えられています。

これらはそれぞれ税率などは異なりますが、所得が多い人や財産を多く所有している富裕層の人に対しては高い税率から多く税金を納めることができるため、上述したように所得格差の拡大防止に繋がります。

以下では、累進課税制度が適用される所得税、相続税、贈与税について具体的な計算例を基にいくら税金が計算されるのか解説します。

所得税については課税所得に税率を乗じて算出された金額から所得控除額を差し引いた金額が納めるべき税金になります。

仮に課税所得を1,000万円とした場合には、1,000万円×33%-1,536,000円=1,764,000が納めるべき所得税となります。

相続税については遺産総額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出します。

そして、課税遺産総額に各人の法定相続分を乗じた金額に、相続税率を乗じて納めるべき相続税を算出します。

仮に遺産総額8,000万円を相続人3名(妻、子供2名)を例に解説します。

まず、遺産総額8,000万円から基礎控除額3,000万円+各相続人1人あたり600万円×3名を控除すると、課税遺産総額3,200万円が算出されます。

この3,200万円を法定相続分で按分すると妻は3,200万円×1/2=1,600万円、子供2名はそれぞれ3,200万円×1/4=800万円が課税遺産総額となります。

妻の納めるべき相続税は、1,600万円×15%-50万円=190万円となります。

子供2名がそれぞれ納めるべき相続税は、800万円×10%=80万円となります。

贈与税については、贈与によりもらった財産の価額から基礎控除額を差し引いた金額に税率を乗じ、控除額を差し引いて計算します。

直系尊属以外の他人から贈与財産500万円を贈与により取得した場合の税額を解説します。

500万円から基礎控除額110万円を差し引いた基礎控除後の課税価額390万円が算出されます。

次に390万円に20%を乗じた金額から控除額25万円を差し引いた53万円が納めるべき贈与税となります。

住民税の申告について

所得税は累進課税により所得が多ければ多いほど納税額が増加します。

しかし、住民税については一律10%の税率となっております。

この10%は県民税4%と市民税6%が合算された税率となっております。

この住民税は、その地域に住んでいる住民が利用するさまざまな行政サービスを実施するために必要な費用を住民税によって賄われております。

所得税と異なる点は、累進課税制度ではない点のほか、基礎控除や扶養控除の控除額についても異なっており、住民税の方が所得税に比べて控除額が少なくなっています。

所得税の基礎控除額が48万円に対して、住民税の基礎控除額は43万円となっています。

最後に住民税の申告が必要な人について、解説します。

まず、住民税の申告が不要な人は以下の場合になります。

  • 税務署に確定申告書を提出している人
  • 勤務先から管轄の市区町村へ給与支払報告書が提出され、他に所得がない人
  • 公的年金収入のみで、源泉徴収票に記載されている控除に変更がない人

以上が、住民税の申告が不要な人になります。

次に住民税の申告が必要な人は以下の通りです。

  • 前年の1月から12月までの間に収入があった人で、上述した、住民税の申告が不要な人に該当しない人
  • 前年の1月から12月までの間に収入がなかった方

以上が、住民税の申告が必要な人になります。

まとめ

累進課税制度とは、課税の公平を確保するためには非常に考えられた課税方式であり、国民の所得格差拡大を防止するためには最適な課税方式となります。

しかし、累進課税制度は自分で税額計算するには複雑な課税方式であるため、自分の正しい税額を知るためには税理士に相談することが確実な方法になります。

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新川 尚

exillia accounting officeの税理士・公認会計士です。
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